BtoB企業におけるWebサイトの活用はより重要視されおり、実際に製品・サービスの購入のために最もよく参考にする情報源は企業Webサイトで70%近くにものぼります。(※)
Webサイトのリニューアルを検討する際に、RFP(提案依頼書)と呼ばれるドキュメントに要件を定めることで、Webサイトリニューアルの目的を再確認するとともに、提案の判断基準を明確にしておく必要があります。
当記事では、BtoB企業向けRFPのサンプルをダウンロードできます。
※参照元:トライベック・ブランド戦略研究所 BtoBサイト調査 2019
RFPとは『Request For Proposal』の略称で、Webサイトやシステムのリニューアルや構築時に、どういったものを構築したいのかを取りまとめ、発注先の制作会社へ共有し、具体的な提案を依頼するドキュメントを指します。
RFPを作るメリットについては、大きく次の2つになります。
①要望を資料化し社内に共有・合意形成することで、発注後の社内トラブルを避けることができる
②発注先へ平等に情報提供を行うことができるため、提案の品質を担保できる。また、要望に対しての提案をもらえるため、評価軸が明確になり、業者を選定しやすくなる
BtoCやBtoBの中でもWebマーケティングに積極的な企業は、3年周期でWebサイトをリニューアルする傾向にあります。
その理由はWebトレンドやWebを取り巻く通信環境などが2~3年で移り変わるという外的要因と、企業経営において多くの会社が3カ年計画を遂行しており、その区切りのタイミングでWebサイトリニューアルを実施する機会が発生しやすいという内部要因によるものです。
一方で、BtoBの製造業、特に安定顧客をメインにビジネスをしている企業については、5~6年Webサイトを放置している企業も多く見られます。すると、いざWebサイトをリニューアルとなっても、Webトレンドを追いかけられていなかったり、間が空きすぎて前回リニューアル時の経験を活かせなかったり、場合によっては担当者が退職してしまっているなんてこともあったりで、実質はじめての取り組みとなってしまう事例も見られます。
これらの対策として、Webサイトリニューアルの目的や課題を整理し、適切なWeb制作会社を選定し、プロジェクトをスムーズに進行するためにもRFPを策定する必要があります。
RFPを策定するにあたり、まず初めに決めなければならないのが、Webサイトリニューアルの目的です。目的を定めなければ、画竜点睛を欠くどころか、そもそもプロジェクトのスタートすら切れないものとなってしまいます。これまで多くのBtoB企業のWebサイトを担当した経験から、目的は大きく3つに分類される傾向となっています。
安定顧客との取引を主とした企業に見られます。クライアントや採用応募者が会社情報を見に来た際に、安心して頂けることを目的とし、最低限の情報のみを掲載しているケースです。
営業を販売代理店が担っている場合は、製品情報も比較的簡素化していることが見られます。
自社製品の品番や、商品名などを検索エンジンで検索した際にちゃんと自社サイトへ誘導し、適切な情報を発信することで、商品検討してもらうことを目的とします。
メーカーの場合、カタログで商品検討してもらうことで問い合わせを獲得したい企業と、カタログを見て商品情報をしっかり把握してもらうことで、営業所などへの問い合わせを減らしたい企業の両方のニーズが見られます。
自社商品名の他に、製品カテゴリ名での検索に上位表示させることで業界での優位性を確立しつつ、ユーザーの課題解決を促すコンテンツを提供することにより、問い合わせや購買につなげることを目的とします。
定期的なコンテンツ運用や、MA(マーケティングオートメーション)などの導入にも積極的な企業が多く見られます。
社内で目的・方向性が決定したら、RFPに必要な項目を埋めていきましょう。
・リニューアルの背景と目的
貴社の強みや課題を共有しましょう。またユーザーのターゲットなども明確にしておくといいでしょう。
・リニューアルの目標
シンプルかつ明確な目標設定が可能な『SMARTゴール(※)』で設定するといいかもしれません。
※参照元:HubSpot マーケティングのSMARTゴール設定方法
・予算
上限費用は明確にしておきましょう。また支払い条件なども明確にしておくと安心してもらえます。運用費用などが発生する場合は、それらをどうするかも明記しておきましょう。
・スケジュール
少なくともオリエン日、プレゼン日、業者決定日、納品日を明記しましょう。
・競合情報・ベンチマーク
競合サイトやイメージしているサイトなどがあれば共有してください。
・提案依頼範囲
デザインだけなのか、システム構築を含むのか、サーバについて、コンテンツ制作など、どこまで対応してほしいのかの概略。
また提案時にデザイン案が欲しいなどの要望があるのであれば明記しておきましょう。納品成果物もここで定めるといいでしょう。
・コンテンツ制作範囲
可能であれば事前にサイトマップなど、想定しているコンテンツが何か分かるものを用意しておくといいでしょう。そのコンテンツの中身(文章・写真・イラストなど)を自社で用意するのか、制作会社が制作するのかを明確にしましょう。
また、貴社ビジネスに合わせたコンテンツ提案を依頼してもいいでしょう。
・問い合わせフォーム
問い合わせフォームに必要な項目などを共有しておくといいでしょう。
・新着情報CMS
どれくらいの頻度で更新するかを想定し、更新本数が多いようであれば、投稿カテゴリなどを設けて探しやすくするといいでしょう。
・商品情報CMS
商品情報を更新できる仕組みを作るにあたり、商品点数、カテゴリ数などを洗い出しましょう。
またどのような商品情報ページにしたいのかを検討する上で、最も情報が充実した商品のデータを共有すると制作会社側も設計がしやすくなります。
・保守契約
主にサーバ回りの保守や、Webサイトのシステム保守の契約になると思いますが、よほど大規模出ない限り契約も不要な場合が多いです。但し、導入したCMSによっては毎年(もしくは毎月)利用料を支払う必要があります。
・コンテンツ運用
コンテンツ運用の範囲(バナーだけなのか、記事作成などを含むのか)などを明確にしておきましょう。またSEO対策やSNS運用などの要件があれば合わせてまとめおくといいでしょう。
Webの制作会社については、その企業規模などによって全く予算感が異なる場合があります。RFPを用意しても、そもそも予算感に合わない制作会社に声をかけても断られるだけとなります。予め、何ページくらいでこういった機能を作った場合の概算見積もりをヒアリングした上で、予算感の合う制作会社をピックアップしておく必要があります。
RFPを作るにも、Webサイトに関しての知識が無いと書けないことも多々あります。そういった場合は最も信頼のおける(仲の良い)制作会社にサポートを依頼してもいいでしょう。
RFPの作成を依頼するということは、その制作会社が最も情報を有するため、コンペにおいて十分なメリットを得ることができるため、無償で受けてもらえる可能性があります。
※あまりコンペの参加社数が多いとそもそもコンペを受けてもらえない可能性があります。3社程度を目処にしておきましょう。
依頼内容の規模にもよりますが、一般的なWebサイトの構築であれば、オリエンテーションからプレゼンテーションまでは2週間程度の期間を取りましょう。特にデザインラフを提案資料に含む場合、ある程度の猶予が無ければデザインが作れません。
RFPは「社内の合意形成」や「適切な制作会社選定」のためのドキュメントとなります。そしてそれはプロジェクトを開始する第一歩です。第一歩から関係者がバラバラの目的を目指してしまわないよう、正しい要件をRFPに定めることが重要になります。
そして最後に、RFPに定めた目的を達成するために、制作会社を下請けとしてではなく、貴社プロジェクトを成功に導くパートナーとして信頼して進めていくことがプロジェクト成功の秘訣なります。