「オウンドメディアとは、自社が運用するメディアのことです」。
Webマーケティングに少しでも関わったことがある人なら、オウンドメディアのことをこのように説明するでしょう。もちろん、正解です。
しかし──。その目的や役割、メリットをきちんと説明できる人って、実はそれほど多くないのでは?
本記事では、Webマーケティングの初心者や、オウンドメディアのことをもっと知りたい!という人がより理解を深められるよう、イチから説明します。
英語で書くと「owned media」。
名前の通り“自社が所有しているメディア”のこと。つまり、企業や組織が発信している媒体を指します。
昔からある企業パンフレットなどの冊子もオウンドメディアに含まれますが、近年の日本では企業が運営するWebマガジンやブログなどが代表的なものとして認識されているようです。
マーケティング業界では、このオウンドメディアと、ペイドメディア(paid media)、アーンドメディア(earned Media)をひとくくりにして「トリプルメディア」と呼んでいます。
ペイドメディアは広告費を支払うメディアのことで、新聞や雑誌、テレビ、ラジオ、ネットなどが有名です。一方、アーンドメディアは主にSNS(Twitter、Facebookなど)を活用してファンからの信用・信頼を得るメディアのこと。SNSの急速な普及によって、多くの企業が情報発信にアーンドメディアを活用しています。
※SNSというサービス自体はアーンドメディアですが、自社で企業アカウントを運用(コントロール)しているケースも少なくないため、オウンドメディアとしての側面も併せ持っています
このようにトリプルメディアの特性は三者三様。
そのため、Webマーケティングを効果的に進める上で、これらを組み合わせ、補完しながら活用していくことが重要となります。
オウンドメディアの大きな特長は、「企業自身が情報をコントロールできる」という点。自社メディアであるがゆえに、目的に向かって自社主導で長期的な管理が可能です。その目的は、一般的に下記の2つといわれています。
ユーザー(潜在顧客)との初回接触を狙う
企業、製品・サービスのファンになってもらう
まずは1について。どんなによいモノやサービスを提供していても、それらの情報が潜在顧客に届き、ユーティリティを感じ取ってもらえなければ意味がありません。広告で大々的にPRするという戦略もありますが、そんなことができるのは一部の大企業ぐらいです。
その点、オウンドメディアは大規模な広告費をかけず、コンテンツを蓄積していくことで、幅広い潜在顧客への接触が可能となります。また、ペイドメディアやアーンドメディアを併用することで、誘導されてきた潜在顧客へさまざまな情報を発信でき、製品やサービスの認知を促せるでしょう。
1の段階で、たくさんの潜在顧客に有益な情報を伝えることができれば、その後どうなるのか。潜在顧客は見込み客となり、それがリアルな顧客に変わり、最終的には優良顧客になってくれます。つまり、オウンドメディアを地道に続けていくことで、コンテンツ資産が充実し、企業からの“想い”も伝わり、その結果、ファンが生まれるというわけです。これが目的2となります。
オウンドメディアには、「検索エンジンにヒットする」「情報を蓄積できる」というメリットがあります。SNSが普及した現在では、ハッシュタグ検索で接触してくるユーザーも少なくありません。即効性という意味ではSNSに軍配が上がるので、先にも述べたように複数メディアを併用し、効率的に潜在顧客へアプローチすることが成功のカギとなります。
ちなみに、オウンドメディアの課題としてよく挙げられるのは、成果の即効性が乏しい、認知に時間がかかる、運用が大変、など。顧客を育てる前に、まずは自らがメディアとして育たなくてはいけません。逆にいえば、コツコツと時間をかけてコンテンツの充実を図っていけば、やがては製品やサービスのファンがどんどん増えていくでしょう。
現在、非常に多くの企業がオウンドメディアを運用しています。業種も多岐にわたり、目的もさまざまです。製品・サービスの認知向上やファン獲得が大きな目的であることは先にも述べましたが、いろいろな企業のオウンドメディアを見ていくと、その企業なりのコンセプトや見せ方で目標に向かっていることが想像できます。
例えば、企業のブランディングを目指して運用されているケース。オウンドメディアの成功事例としてよく紹介されているのは、サイボウズの「サイボウズ式」です。同社がオウンドメディアを立ち上げたのは2012年5月のこと。「サイボウズを知らない人に、サイボウズのことを知ってもらう」という、非常に明快な理由でスタートしました。
ブランド認知度の向上を目的に始まった「サイボウズ式」。現在も平均月間PVは20万程度でUUは約15万と、安定した数値を獲得しています。
記事の企画は全て自社で行い、テーマも「マネジメント」「ワークスタイル」「キャリア」「就活」と、バラエティー豊か。業界人の対談やインタビュー記事も定期的に投稿されています。生活者の役立つコンテンツを発信し続けることでブランディングが強化され、それが優良顧客の確保につながる──。サイボウズ式は、オウンドメディアの理想的な成功事例といえるでしょう。
目的:新規の顧客や問い合わせの獲得
「LISIKUL」
顧客である中小企業向けのWebマーケティングノウハウ記事を掲載。月間の問い合わせ数が3件から200件に増加。
目的:自社商品の販売
「体幹トレーニング」「腰痛ストレッチ」などのビッグワードで記事を投稿。公開から4ヶ月で20万PV、約1年後には100万PVを達成。オウンドメディア経由の月間販売数は800件超。
それでは、これからオウンドメディアを運用していくにあたって、何から始めればよいでしょうか?まずは、目的です。
「ブランド認知度の向上」「見込み客の獲得」「見込み客の育成」「顧客との接触の増加」「売り上げUP」「採用の強化」など、さまざまな目的が考えられます。
オウンドメディアを活用して、どのようなゴールにたどり着きたいのかを決めましょう。大事なのは、どんな目的であれ、とにかく明確に設定することです。
次に欠かせないのは、「このメディアをどのような人に見てもらいたいのか」という「ペルソナ(ターゲット)設定」です。年齢・性別・職業・趣味はもちろん、何を求めているのか、何に困っているのか、など、具体的なペルソナを設定しておく必要があります。
目的とペルソナが決まれば、それに合わせた全体のコンセプトとコンテンツの内容を決定します。コンセプトとは、「誰に対して、何を発信するのか」という方向性です。方向性が決まれば、ペルソナに向けたコンテンツを制作します。
ただ発信したい情報を独りよがりに書き連ねるのではなく、常に顧客視点を意識しながらコンテンツを制作していくことがファンの獲得につながります。
もちろん、コンテンツを制作するときはSEO対策も必須です。
これらの準備が整ったら、いよいよ公開まであと少し。
長期的な運用が可能な人数でチームを編成し、運用のための仕組みづくりや制作スケジュールを整えましょう。
中には結果を出せないままオウンドメディアを途中でやめてしまう企業もありますが、失敗の原因としては下記のケースなどが考えられます。
長期的な運用を目指すためには、これらの失敗要因をきちんと把握したうえで、最適なサイトづくりを心がけねばなりません。
オウンドメディアを通してユーザーに有益な情報を発信し、円滑にコミュニケーションを取ることで、潜在顧客が顧客に変わる可能性があります。
クオリティーを維持しながら運用を続けていくのは容易ではありませんが、軌道に乗ったオウンドメディアは、間違いなく自社の強力な武器になるでしょう。